農福連携に関わる園芸療法士・作業療法士の就労継続支援B型事業所でのチャレンジ日記⑥「お正月へ渡した、小さな橋」

今年1月に卒業した週末農学校での学びは、いくつものかたちで心に残っていますが、京都・北山の冬のマルシェで過ごした一日は、今も優しいぬくもりとして心に残っています。

12月の澄んだ空気の中、「年の瀬や新年の食卓に寄り添える野菜を届けたい」と願いながら、京野菜を中心に育てました。

とりわけ心を込めたのは、鮮やかな紅を宿す金時人参でした。

お正月の彩りを思い描きながら、土と向き合う日々は、どこか凛とした喜びに満ちていました。

当日のマルシェは、住宅街にほど近い穏やかな場所で開かれ、目的を持って訪れた人も、ふと足を止めた人も、ゆるやかに交わるあたたかな時間が流れていました。

そんな中で出会った、一人の女性の姿が、今も忘れられません。

金時人参を手に取りながら、「もうすぐお正月だから、花形に切ろうかしら。もう少し太いものはある?」と、やさしく微笑まれました。

その言葉に背中を押されるようにバックヤードを探すと、ひときわ立派に育った一本が目に入りました。
土の恵みをたっぷりと宿したその人参を差し出すと、「これがいいわ」と、女性はほころぶような笑顔で選んでくださいました。

その瞬間、心の奥に小さな灯りがともるようでした。

自分の手から旅立つ野菜が、お正月という特別な時間の中で食卓に並び、誰かの大切なひとときを彩る光景を思い浮かべると、心があたたかく満たされていきました。

それは、ただの収穫の喜びではなく、人と人とをつなぐささやかな橋を渡したような感覚でした。

野菜を育てるという営みは、土と向き合うだけでは終わらない。
その先にある誰かの暮らしや記憶、そして季節の節目にそっと寄り添っていくものなのだと、このマルシェで教えられました。

これからも、誰かの時間にやわらかく寄り添い、日々の食卓に小さな彩りを添えられるような、思いのこもった野菜づくりを続けていきたいと思います。

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